────Japan Association for East Asian Text Processing(JAET)────

△▼△▼△▼△     漢 字 文 献 情 報 処 理 研 究 会     △▼△▼△▼△
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========== 東洋学研究・教育の電子化と電脳漢字処理の最新情報 ==========

                  ■□    2010.7.1    □■
                  ■□   第一六二号   □■

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◆◇ JAET か ら の お 知 ら せ  ◇◆
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┃■2010年漢情研公開シンポジウム 電子出版の動向と諸問題┃★残席僅少☆
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ここ最近、AmazonのKindle、AppleのiPadなどが発売され、電子出版・電子書
籍をめぐる議論が活発化しています。これらの動向は、学術情報の流通や発信
に関心がある研究者にとって看過できないものであることはもちろん、紙の書
物を主な媒体としたこれまでの文化・学術のあり方全体を再考する契機となる
ものだと思われます。

しかし、現在の論調は、全体としては無批判な礼賛か感情的な反発に大きく二
分されているという印象があります。その一方で、Appleなどのプラットフォー
ム企業が行っている電子書籍の検閲の問題などは、ごく一部で指摘されてはい
るものの、全体としては大きな関心とはなっていません。

本シンポジウムでは、電子書籍の持つ新たな可能性を模索しつつも、検閲やラ
イセンスの問題を踏まえながら、より望ましい電子書籍・電子出版のあり方に
ついて議論ができればと考えています。今回は報告者として、『電子書籍元年
iPad&キンドルで本と出版業界は激変するか?』(インプレスジャパン)の著
者である田代真人氏、CHISEをはじめとする文書表現系フリーソフトウェア開
発者の守岡知彦氏、プラットフォーム問題についてお詳しい石岡克俊氏をお招
きしております。皆様のご参加を歓迎いたします。

・日時:7月10日(土)13:00~17:30
・会場:慶應大阪リバーサイドキャンパス Room1
     http://www.korc.keio.ac.jp/access/index.html
・入場無料(ただし非会員は参加費500円を申し受けます)
・要申し込み(http://www.jaet.gr.jp/meeting.html)

・プログラム
 13:00~13:10:代表挨拶
 13:10~14:10:報告1 田代真人氏((株)メディア・ナレッジ代表、
            (株)アゴラブックス取締役)
 14:10~14:50:報告2 守岡知彦氏(京都大学人文科学研究所助教)
 14:50~15:30:報告3 石岡克俊氏(慶応義塾大学産業研究所准教授)
 16:00~17:30:ディスカッション

・シンポジウム終了後、懇親会を開催します。会費:一般\6,000 学生\4,000
・詳細は、以下のURLをご参照ください。
  http://www.jaet.gr.jp/meeting.html

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■会員向け情報
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○【重要】全会員向け発送のご案内
   全会員を対象に、郵送にて「会員登録データのご確認および会費納入状況
   のご連絡について」をお送りしました。ご所属やご住所等に変更がある方
   および会員種別の変更をご希望の方は至急お知らせください。
   ・詳細情報:
     http://www.jaet.gr.jp/JAET-BBS/contents.cgi?room=an&mes=857

○【重要】会費納入のお願い
   会費未納の方は、出来るだけ早くお振り込みください。
   振込口座は http://www.jaet.gr.jp/JAET-BBS/ (会員専用)トップペー 
   ジにてご確認ください。また、会員種別変更(一般・BBS)も随時受付中 
   です。
  ※一般会員で本年度会費が未納の方には、『漢字文献情報処理研究』が発
    送されません。早急にお振り込みください。

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■イベント情報
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○DVD版内村鑑三全集刊行記念シンポジウム

日時:2010年7月3日(土) 1:00~5:00
場所:国際基督教大学(ICU)本部棟206室
主催:内村鑑三全集DVD版出版会有志
協賛:ICU千葉眞研究室
企画:當山日出夫

http://yamamomo.asablo.jp/blog/2010/06/06/5142182

※近代史の史資料の電子化というだけでなく、電子書籍・電子出版もテーマの
  一つになっている。

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◆◇ JAET-BBS ダ イ ジ ェ ス ト・2010.5.26~6.25  ◇◆
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・漢情研会員はリンクをクリックするとJAET-BBSの当該発言を閲覧できます。
・BBS更新情報はRSSでも配信しています。http://www.jaet.gr.jp/index.xml

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■雑談  <電脳・社会・学界をめぐって>
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○おもちゃ(iPad)買いました
   今話題のiPad購入者からのファーストインプレッション。
   http://www.jaet.gr.jp/JAET-BBS/contents.cgi?room=ac4&mes=262

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■電脳情報  <Webサイト・ソフトウエア etc.>
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○【雑誌記事】中国は電子書籍の「影の先進国」
   日経エレクトロニクスの記事の紹介。Apabiなどの電子図書館ソリューショ
   ンが中国では広く普及している。
   http://www.jaet.gr.jp/JAET-BBS/contents.cgi?room=info3&mes=852

○Office 2010
  このほどパッケージ版が正式発売されたMS Office 2010のテストレポート。
  ●Office 2010添付の日本語フォントと互換フォントの公開
    Office 2010ではHG丸ゴシックなどの5書体もJIS X 0213:2004に対応した。
    http://www.jaet.gr.jp/JAET-BBS/contents.cgi?room=info3&mes=855
  ●【Office2010】言語パック
    ボリュームライセンス版で言語パックがダウンロードできるように。中国
    語の翻訳機能が使いやすくなった。
    http://www.jaet.gr.jp/JAET-BBS/contents.cgi?room=info3&mes=858
  ●【Office2010】中国語フォントは変化なし
    言語パックで追加される繁体字・簡体字フォントには変化が無い模様。
    http://www.jaet.gr.jp/JAET-BBS/contents.cgi?room=info3&mes=860

○Microsoft Office 輸入法 2010
   MSの繁体字中国語IMEの最新版がダウンロード可能。
   http://www.jaet.gr.jp/JAET-BBS/contents.cgi?room=info3&mes=859

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■文字処理情報 <テキスト処理と文字コード>
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○CHISE IDS 漢字検索 バージョンアップ
   守岡知彦さんの「CHISE IDS 漢字検索」がアップデートした。
   http://jaet.gr.jp/JAET-BBS/contents.cgi?room=code2&mes=844

―気まぐれコラム―――――――――――――――――――――――――――

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◆◇ 『電脳中国学III』の憂鬱  ◇◆
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                                                  千田大介@電脳瓦崗寨

■決まらないコンセプト

昨年度の大会で、『電脳中国学III』(仮)の企画案について討議した。筆者
が提案した電脳マニュアル+中国学デジタルリファレンスマニュアルという案
に対して、初年次教育に注力すべき、前半と後半の分離、あるいはパソコンに
おける多漢字・多言語マニュアルという基本に立ち返るべき、など、様々な意
見を賜った。それを受けて、現在、鋭意『電脳中国学III』の目次案を作成し
ているのだが、しかしなかなかコンセプトが絞りきれず、難航している。

電脳マニュアルとして作り、中国学の入門授業のほか、語学副読本ニーズも取
り込もう、という案もある。盛り込むべき電脳スキルのレベルは、どちらも大
差なかろう。しかし、専門の入門授業はどちらかというと初年次教育的構成が
必要となるので、語学副読本との両立は難しい。リファレンスマニュアルにし
ても、いかんせん想定読者が少なく、ロングテイル的売り上げは見込めるかも
しれないが、ペイするかどうかが見えてこない。いずれの案も、それなりに問
題を抱えており、なかなか妙案が浮かばないのだ。

■十年の歳月

振り返ってみれば、1998年に『電脳中国学』を出したとき、このような迷いは
無かった。Niftyの歴史フォーラムから有志が独立して秘密宗教結社中文電脳
教メーリングリストを立ち上げたのが1997年、やがて『電脳中国学』の企画話
が持ち上がり、タイトル・目次案から本文まで、すべてをML上に流してはブラッ
シュアップして作り上げたものだった。ちなみに漢情研という名称は、出版に
あわせて正式な研究会組織に改組する必要が生じたために命名されたものだ。

当時はWindows 95/98とともにパソコンの普及が進む、いわゆるITバブル時期
にあたり、上から下まで社会を上げて情報化の熱に浮かされていた。しかし多
言語・多漢字処理という方面では、Win 95/98はローカルコードベースのOSで
あったために何かと困難がつきまとい、パソコンで中国語やUnicodeの2万字以
上の漢字が使えることもほとんど知られていなかった。

『電脳中国学』が迷い無くオールインワンのマニュアルであり得たのは、こう
した時代的背景ゆえである。Windowsの多漢字・多言語機能と中国学学術リソー
スのガイドを一つにまとめて出版することは、技術・知識の普及をはかり、ま
た来るべき本格的情報化時代における東洋学研究のあり方を示す、という意味
があった。それはまた、当時の人文学界に存在していた、情報化へのバラ色の
夢と漠然とした不安にもキャッチアップしていた。

■拡散する電脳中国学

しかし今やワープロ専用機は姿を消し、Windowsはユニコード内部処理化し、
デフォルト機能だけで多言語を扱えるようになった。ネット上の解説ページを
読めば、すぐに7万字以上の漢字を入力したり、中国語を扱うことが出来る。
学生や院生たちは、家にパソコンがあり、学校で情報処理の授業を受けてきて
いるし、教員も学校の事務作業でパソコンを否応なしに使わなくてはならなく
なった。

そうした中にあって、情報化への意識もだいぶん様変わりした。かつてのよう
な切迫感が消えた反面、かつて一部の人文学研究者が抱いていた、情報化によっ
て自らの研究が圧迫されるのではという誤解に基づく不安も解消し、逆に情報
化を軽視するような風潮も生まれている。側聞するところでは、メール・ワー
プロ程度しかパソコンの使えない大学教授が、中国語のデータベースを検索し
たりブログを開設できたりする程度のスキルの学生を電脳の達人と持ち上げ、
本人も天狗になっているような例も増えているようだ。

かつて情報化に託されたバラ色の夢は、確かに多くが幻想であったが、幻想が
潰えたことと夢が消えたこととは同義ではない。情報化が進展したからこそ、
基礎から理解を深める必要があるはずだが、現実問題として、『電脳中国学』
時代のような中国学情報化の情報に対する飢餓感は、消えている。

このため、『電脳中国学III』がかつてのようなオールインワン路線を目指す
ことは難しく、現実の授業・研究におけるニーズを確実に取り込む方向を模索
しなくてはならない。ところがそのニーズは、昨今、各大学が様々なカリキュ
ラム改革の努力を行ってきたことで、初年次教育・情報処理入門教育・人文学
情報処理教育、さらには語学や教養授業の一環としての中国語・多漢字処理教
育、専門授業の一環としてのデータベース検索実習など、拡散してしまってい
る。

これが、コンセプトを一つに定めることのできない、最大の理由である。

■カウンターであるために

我々は、『電脳中国学』の出版によって、多くの若手研究者が中国学情報化の
必要性に目覚めてくれるものと予測していた。しかしあれから十年、その予測
が的外れだったことは明白になっている。電脳派の研究者は、いつまでたって
もほんの一握りの見知った人たちばかりであり、裾野はいっこうに広がらない。

多くの研究者の情報化に対する態度も、メディアの論調に踊らされる庶民のそ
れとさしたる違いはない。いや文部科学省の中学高校情報教育の迷走ぶりから
すると、政府すらも同じような感覚なのかもしれない。

しかし、情報化が話題にならなくなったのは、むしろ情報化が一般化し、もは
や取り立てて言うべきことではなくなったからであり、その重要性はいっこう
に減じていない。むしろ、社会のインフラという意味では、水や空気のように欠
くべからざるものになっていると言えよう。

人文学情報化についても同様だ。台湾中央研究院を嚆矢とする各種古典文献デー
タベースや様々な専門データベース・コーパス・OPACなどを何一つ利用しない研
究者は、もはやほとんどいないと思われるが、一方でデータベースごとの漢字処
理のクセを把握している人、あるいは正規表現等による検索条件の指定ができる
人も限られている。まして、自らデータベースなどのあらたな学術リソースを提
供する人は寥寥無幾である。

かつて、世界最先端を誇った日本中国学は、今やメインランド中国学術の発展
の前に地盤沈下が著しい。その一つの表れが、学術リソース発信の乏しさである。
そう考えれば、情報化が言われなくなった今であるからこそ、情報化の本質的な
意味を知らしめることは、真のカウンターたり得るのではないか。

『電脳中国学III』は、是非ともそのような存在になるように作り上げたいもの
である。限られたマンパワーでそれを実現するには、いかなる戦略が有効だろう
か?この難解な方程式の解を、漢情研のこれまでの歩みを今一度振り返りつつ、
考えていきたいと思う。

                                        (このコラムは不定期掲載です)

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Last-modified: 2018-10-20 (土) 15:51:08